あつしまにあ

~酒と音楽を愛する男の雑談~

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I氏のバッテリーを持って店の奥へ消えた男は、なかなか戻っては来なかった。

しばらく待って、男はようやく同じバッテリーの在り処を見つけた。店のバイクに取り付けられていた中古品だった。
それでも、I氏の持参したバッテリーよりはきれいだったので、結局それを購入することとし、古いバッテリーは引き取ってもらい私たちは港へと戻った。

港へ戻ると、すでにネジの問題は解決されていた。
フェリー待ちの中年の男が、合うネジを見つけてくれて、取り付けてくれていたのだ。
「これでバッテリーも取り替えれば!」俄然士気の上がる私たち。
ついに問題は解決かと思われた。
期待に胸をふくらませ、キーを回す。


ついにこのバイクのエンジン音が聞け・・・、ない。何で???


またしても炎天下での作業は続くこととなった。
ありとあらゆる場所を見、正常かどうかチェックする。
しかし、何度キーを回してもエンジンは動き出してくれなかった。


そうこうしているうちに、青森からやって来たフェリーが到着した。
ねぶた終わりのライダーたちが、大勢北の大地へ繰り出して行く。
そんなライダーの中に、パパさんとねぶたで一緒になり、祭り後は別行動を取るはずだったF氏とY氏がいた。
彼らは下船するところをパパさんに見つかり、この苦闘の道連れにされてしまった。

バイクを調べる人間は増えたが、やはり何度キーを回してもエンジンは動き出してくれなかった。
そして、何の変化もないまま時間は過ぎ、ギャラリーは増える一方であった。

フェリーターミナルの職員は、フェリーが到着するたびに事務所を出て、本州から来るフェリーを出迎える。
初めは無関心だった彼らも、さすがに三、四時間も経過すると、心配そうに声をかけ、壊れたバイクを見つめていた。


私の後ろにも、いつの間にか一人の老人が立つようになった。
齢八十にはなろうかというその老人も、心配そうに作業を見つめていた。


「ことによると、この老人も若かりし頃はバイクにまたがり、北の大地で風になっていたのかもしれない・・・・・・」



しかし、ロマンと違い現実は非情である。


「おじいちゃん!?そんなとこで何やってるの!?」


老人は、娘に手を引かれ、背中に哀愁を漂わせて待合室へと去って行った。


そんなやりとりを尻目に、I氏のバイクはどんなに調べられ、どんなにキーを回しても動いてくれなかった。

気がつくと、ギャラリーはいなくなってしまっていた。
そして、老人の背中以上に哀愁漂う色が、真夏の空を支配し始めていた。(つづく)
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